読書と散歩

普段は通勤電車に揺られながら、休日は散歩しながら、のんびり読んでます。

11月の読書メーター まとめ

11月の読書メーター
読んだ本の数:15
読んだページ数:3450
ナイス数:573

ユリイカ 1989年 3月 臨時増刊 総特集 ※監督 川島雄三 ●<川島雄三作品集 ・エッセイ・ドラマ・俳句・座談会・戯文・シナリオ>ユリイカ 1989年 3月 臨時増刊 総特集 ※監督 川島雄三 ●<川島雄三作品集 ・エッセイ・ドラマ・俳句・座談会・戯文・シナリオ>感想
ALSだったのである。女優に喋り方を揶揄われ不機嫌におし黙る痛々しいエピソードを、小沢昭一が愛情深く語っている。小沢はきき返したりせず、聴き取れた言葉の断片から川島の意図をじっくり考えたそうだ。フランキー堺のインタビューからも、川島の自己破壊的な生き方と孤独が色濃く感じられる。作品と監督を重ねるのは邪道だが、自分が若死にすることを自覚しつつ酒をあおり親と絶縁し月収の数倍のスーツを身にまとう生き様は彼の作品の登場人物達そのままだ。「いきてるうちがはなではないか/さいげつひとをまたないぜ」。
読了日:11月26日 著者:織田作之助,岡本喜八,藤本義一,蜷川幸雄,加藤幹郎
はじめての暗渠散歩: 水のない水辺をあるく (ちくま文庫)はじめての暗渠散歩: 水のない水辺をあるく (ちくま文庫)感想
第1章〈暗渠入門〉は、暗渠をどう楽しむべきか、一見普通の道のどこを見れば暗渠だと気づけるかが語られる。第2章は、車止めを分類してみたり、橋跡を巡ったり、三四郎や濹東綺譚に登場した川を辿ったりという、書き手それぞれの暗渠の楽しみ方の具体例。第3章では都内だけでなく大阪や神戸の暗渠が辿られる。私自身は暗渠にそこまで思い入れはないが、子供の頃自宅近くにあった川が塞がれ遊歩道となった嫌な思い出がある。その暗渠付近が取り上げられてないかなと思い手に取ったのだが、残念ながら載っていなかった。では、いずれ自分で辿ろう。
読了日:11月26日 著者:本田 創,高山 英男,吉村 生,三土 たつお
南方熊楠: 近代神仙譚 (河出文庫 さ 38-1)南方熊楠: 近代神仙譚 (河出文庫 さ 38-1)感想
1952年に書かれた、熊楠没後三冊目の評伝。現在では、熊楠の評伝やムックの類は膨大にある。そこにこの本の復刻。うーん、意味あるのかな?と思いながら読みました。最初の方は知ってることばかりで正直退屈でしたが、31章から急に佐藤春夫自身が芸術院会員に選ばれ宮中に招かれた話となり、昭和天皇に南方について問いかけたというエピソードが披露され、そこから俄然面白くなりました。同郷の偉人・異人について、佐藤の父母ら含め郷里でどのような伝説が飛び交っていたか、その検証を行った本として、この本は今でも価値がありそうです。
読了日:11月26日 著者:佐藤 春夫
初恋宣言―自選青春小説〈2〉 (集英社文庫)初恋宣言―自選青春小説〈2〉 (集英社文庫)感想
かつての集英社コバルトの星、富島健夫。のちに執筆の路線を官能小説に変え、元少女等から裏切り者だのなんだの非難されたようだが、さて。表題作の『初恋宣言』。併録の『星への歩み』。どちらも物語のテーマは共通しています。いつの世も人々は徒党を組む。男子は暴力で、女子はうわさ話で。烏合の衆。その群れから外れようとする者は男子はリンチにあい、女子は仲間外れにされる。そんなことがなんだ。誇りを持って我が道を行け。そう富島健夫は思っていたのではないか。媒体が少女小説だろうが官能小説だろうが、富島健夫はぶれてなかったのだ。
読了日:11月25日 著者:富島 健夫
ご家族が「失語症」になったら手に取る本ご家族が「失語症」になったら手に取る本感想
安心して患者さんのご家族に薦められる本。症状など医学的な知識も勿論だが、生活面もしっかりふれられてるのが良い。編者のいう通り、制度面はあっという間に古くなるので(来年度の同時改定でガラッと変わるだろうから、あと半年で古びるかな)、改版 のたびに情報アップデートしてもいいかなと感じます。 
読了日:11月23日 著者:中内 一暢
梁塵秘抄 (ちくま学芸文庫)梁塵秘抄 (ちくま学芸文庫)感想
いわば古代のはみ出し者等の歌集である。おそらく、はみ出し具合が現代の我々の感覚からは想像を絶するであろう古代のアウトロー達のうた。それをよりによって法皇が編んだ。そのねじれがまず面白い。しかしそれだけなら一般教養レベルだ。 うたは音と歌詞の融合である。梁塵秘抄は歌詞の部分のごく一部のみが我々の了解範囲内で、音については一部文書として残存してるものの判読困難とされている。当時は音楽が原初的で素朴すぎたので歌詞の比重が大きかったのだろうと西郷先生。だが、その失われた古代の素朴な?音楽を私はすごく聴きたいのだ。
読了日:11月23日 著者:西郷 信綱
日本の人類学 (ちくま新書)日本の人類学 (ちくま新書)感想
遺伝人類学者と霊長類学者の対談。文理に分かれた現状の人類学の姿を嘆き再統合を望んでおられます。それ自体に異論はないです。しかし、アフリカ北部の女性割礼の慣習を批判した流れで文化人類学の文化相対主義も批判し〈全人類に共通な、普遍性のある文化を考えるべき〉というのは議論として雑過ぎで全く同意できません。メスのチンパンジーは排卵日が近いとお尻が張れて目立つ、乱婚制だし目を背けたくなると仰ってますが、チンパンジーにまで普遍的な文化を押し付けるのでしょうか。著者達の思う日本の人類学ってこんなのですか。がっかりです。
読了日:11月20日 著者:山極 寿一,尾本 恵市
誤嚥性肺炎の予防とケア(7つの多面的アプローチをはじめよう)誤嚥性肺炎の予防とケア(7つの多面的アプローチをはじめよう)
読了日:11月13日 著者:前田圭介
折口信夫 - 日本の保守主義者 (中公新書)折口信夫 - 日本の保守主義者 (中公新書)感想
副題にギョっとしたが、この本の中では保守主義という用語は本来の意味で使われている。古代の人々の心情を大切にし、過去へと遡りながら未来を切り開く。折口のうたや言動は戦争に全力で取り組む姿勢を学徒に祈るというものが多い。だが学生から惰弱と罵倒されたり、二・二六事件の反乱者らに憤激したりする。そこに折口の孤独がある。政治化を避け、国文学と民俗学によって社会の外から人々を愛した折口。保守主義という用語を使用した意図についてはあとがきでさりげなく触れられる。著者にとってはそれが答えなんだろうけど、はたしてどうかな。
読了日:11月12日 著者:植村 和秀
彼らがまだ幸福だった頃 (角川文庫 (6285))彼らがまだ幸福だった頃 (角川文庫 (6285))感想
若月勤の写真が巻頭に添えられた中編小説。なにものにもなりたくないという若い男女の出会いの物語。夏、バイク、ゴルフコース沿いのホテル、カメラ。お馴染みのアイテムに彩られたいつもの片岡義男な世界。若月の写真は決して小説の内容そのままではないのだけれど、読み終えた後に見直してみるとストーリーと見事に呼応している。
読了日:11月11日 著者:片岡 義男
銀幕の東京―映画でよみがえる昭和 (中公新書)銀幕の東京―映画でよみがえる昭和 (中公新書)感想
前回の五輪で破壊されてしまった(というより我々が自ら破壊した)昭和2ー30年代の東京の姿を、映画を資料として辿る試み。第1章では小津の『東京物語』、川島雄三の『洲崎パラダイス 赤信号』など13の映画の舞台を丹念に辿る。第2章では有楽町や新橋、渋谷といった町がどのように映画に取り上げられたかが語られる。通して再読し今更気づいたが、五輪前の東京を振り返ることは、東京は海と川の都市であることを再確認することにつながる。今度の五輪、トライアスロン会場であるお台場の水質が心配だと騒がれてますが、今更なにいってるの?
読了日:11月11日 著者:川本 三郎
町工場で、本を読む町工場で、本を読む感想
大田区大森や馬込辺りは文士村で有名だが、無数の町工場がひしめく地域でもある。小関さんは〈旋盤工・作家〉であることにこだわる。ナカグロにこだわる。書評や読書随想がまとめられたこの本からは、紙と鉄と羽田の潮のにおいがする。第1章はわずか15ページで語られる小関さんのライフヒストリー。鮫洲の都立電気工業高校や八景坂の地獄谷を背景に、工場を渡り歩き、町工場の仲間らと同人誌や読書会を開き続けたこれまでの人生が語られます。第2章では、新聞少年だった頃に出会った先輩作家らとの日々が振り返られます。中野重治の持つ凄味よ。
読了日:11月06日 著者:小関 智弘
偏愛蔵書室偏愛蔵書室感想
中日新聞に2010-2014年の間連載されていた批評集。ホフマンスタールからナボコフまで百冊の本が俎上にのせられる。面白いんだけど文学ばかりだなあ、、、と思いながら読んでいたら、美術や哲学の本については難解すぎるので断念したとあとがきにありました。新聞読者に配慮したということでしょうが、諏訪さんが恩師と仰ぐ種村季弘さん流に文学以外の分野と越境した批評にした方が深みが出た気がします。正岡容『風船紛失記』の評が一番よかった。図書館で借りたらページの狭間に紙魚の死骸が貼りついていました。この本にふさわしいな。
読了日:11月05日 著者:諏訪 哲史
天体嗜好症: 一千一秒物語 (河出文庫)天体嗜好症: 一千一秒物語 (河出文庫)感想
第1章は言わずと知れた『一千一秒物語』。第2章はそのヴァリアント。今風に言えばボーイズラブな作品も収録。『つけ髭』、つくづく、ここまで男性の思春期の際どさと甘美と屈辱と絶望をリアルに描いた作品を他に知らない。これをフィクションとして読める連中は幸せだ。第3章は物理ネタの作品群ですが、元ネタの本の引き写しに馬込時代や神戸時代の著者の愚痴が挟まるめちゃくちゃなテキストなので、マジメに読むとバカをみます。第4章は飛行機ものの集成。五反田や馬込の情景とヒコーキを重ねて読める人向け。
読了日:11月04日 著者:稲垣 足穂
石内都写真集『tokyo bay bluse 1982-1984』石内都写真集『tokyo bay bluse 1982-1984』感想
大阪ベイブルースを歌ったのは上田正樹だが、東京湾のこちらも負けてない。1982-1984年にカメラ毎日に連載されたものをまとめた写真集。某ネズミの王国が浦安に出来たばかりの頃の東京湾。あの頃の木更津。あの頃の羽田。夢と魔法の王国?62ページを見よ。もはや主が存命かどうかもわからぬ、ホームレスの住処とおぼしき布団が打ち捨てられた岸辺。夢や魔法の欠片も存在を許されぬ海。生と死の境界線。わずかな希望すら打ち砕く波打ち際。これが東京湾だ。浮かれるな。はしゃぐな。うんたらマウスごときに騙されてなるものか。
読了日:11月04日 著者:石内都

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