8月の読書メーター まとめ

8月の読書メーター
読んだ本の数:20
読んだページ数:4443
ナイス数:450

ことばだけでは伝わらない:コミュニケーションの文化人類学ことばだけでは伝わらない:コミュニケーションの文化人類学感想
『考える人』に連載されていた、著者最晩年の論考。西江さんのこれまでの著作でお馴染みの話題も多いですが、それだけに総決算を意図して書かれた内容のように感じられます。コミュニケーションは7つの要素の混合で成立しているのに、学問の世界では言語だけ・身振りだけなどといった研究となりやすい。7つの要素を支えているのは文化コードであり、地域や時代により多様であるし、会社内ですら社員間で文化コードが違ったりもする。異なる土地・時代に生きる(生きていた)人々の文化を認め合うこと。後半ぐっと文化人類学っぽくなります。
読了日:08月30日 著者:西江雅之
現代思想 2017年8月号 特集=「コミュ障」の時代現代思想 2017年8月号 特集=「コミュ障」の時代感想
もうちょっと違うタイトルつけられなかったのかなあ、ねえ青土社さん?と思っちゃう特集。寄せられた論考、アニメやマンガ・ドラマが好きな人にとっては興味深い内容なのかもしれないですが、、、ちょっとついていけない内容のものが多かったです。平田オリザさんのインタビューも随分乱雑な放談というか、演劇好きなら同意できるのかなあこれ、というような内容。國分功一郎と千葉雅也の対談、斎藤環信田さよ子と森川すいめいの鼎談はそれぞれ読み応えありました。『暇と退屈の倫理学』、そうか、一言でいうならば確かにそういう本だな、あれは。
読了日:08月29日 著者:國分功一郎,千葉雅也,平田オリザ,斎藤環,信田さよ子,森川すいめい,武田砂鉄,貴戸理恵,綾屋紗月,上岡陽江,磯崎新
九十歳。何がめでたい九十歳。何がめでたい感想
著者と同じぐらいの年齢の方に勧められて読みました。書かれてることに賛成できるかというと、うーん、な内容の多いエッセイ集です。でも90歳代の方がユーモラスなエッセイを書いて、それで元気づけられる高齢の読者が大勢いらっしゃるわけで、我が国の出版も捨てたものではないという気もします。高齢社会、殺伐とした取り上げられ方になりがちなので、こういう本がベストセラーになること自体はいいことだなあと。内容については、またあ、お婆ちゃんそんなこと言ってーっ、と受け流して読むのも、真剣に受け止めるのも、どっちでもよしかと。
読了日:08月28日 著者:佐藤愛子
妙高の秋 (1979年)妙高の秋 (1979年)感想
海産塩物を扱う家に産まれた島村さんは長男であり、家を継ぐことは必然でした。しかし小学校教師の影響で文学少年になり、父親はそれに対し警戒心をつのらせます。15歳。問屋に見習い奉公に出したい父親に殴られ、それでも思い切って家出しようとしたけれど、姉に気づかれてしまい、深夜、泣いている母や姉弟達と身震いしながらの話し合い。島村さんは自分の意思を通しますが、それは弟に家業を押し付けるようなものでした。好きに生きることが家族全員の運命を翻弄してしまう時代の、家族の混迷と微かな再生。そんな私小説の表題作を含む短編集。
読了日:08月27日 著者:島村 利正
歯科医のロック歯科医のロック感想
80年代後半に月刊カドカワに連載されていた軽〜いエッセイをまとめたもの。イラストは岡崎京子。この当時日大松戸の無給研究生だったサエキさんの日々が綴られています。BaBeって"Give me up"の人だったっけというような80年代芸能振り返りが出来たり、当時の歯科もやっぱり体育会系だったのねとか、学会の雰囲気基本は変わってないんだなとか歯科業界の振り返りもうんざりしながら出来たりとお得な一冊。マジメに読む本じゃないんですが、巻末の故加藤吉昭先生(総義歯の大家)と矢野顕子・サエキさんとの鼎談は貴重です。
読了日:08月27日 著者:サエキ けんぞう
『日本残酷物語』を読む (平凡社新書)『日本残酷物語』を読む (平凡社新書)感想
昭和34〜36年にかけて平凡社が刊行した『日本残酷物語』。その創刊記念として行われた宮本常一深沢七郎岡本太郎の座談会の分析から本書は始まります。作家と芸術家それぞれの「残酷」に対する受け取り方に異論を挟む宮本。署名原稿にこだわった宮本と、複数の書き手の文章を混ぜリライトした谷川健一との関係のねじれ。「進歩に対する迷信」が蔓延するなか、「進歩のかげに退歩しつつあるものを見定めていく」ことを課題とし、柳田國男に影響を受けつつ越えようとした宮本。本書中にも引用される佐野眞一の本とはまた別の、宮本常一伝。
読了日:08月26日 著者:畑中 章宏
全体構造法でとり組む失語症の在宅リハビリ全体構造法でとり組む失語症の在宅リハビリ
読了日:08月24日 著者:道関 京子
文豪妖怪名作選 (創元推理文庫)文豪妖怪名作選 (創元推理文庫)感想
全部で19篇。冒頭の尾崎紅葉『鬼桃太郎』は、桃太郎に浴びせられた屈辱を晴らそうと桃太郎退治に出かけた鬼の珍道中。挿絵付きでいきなりかっ飛ばしてくれます。泉鏡花天守物語』は怪しくも美しい青獅子の戯曲。日影丈吉『山姫』は、一読妖怪探索の旅行記かと思わせといて、気がつくとあちら側へ。椋鳩十『一反木綿』、ほおこんなの書いてたんですか。内田百閒『件』は、なにを今更ですが、こういう並びで改めて読むとやっぱり流石ですね。巻末には東雅夫の懇切丁寧な編者解説付き。怖くはないですが、クスッと笑える妖怪達のあれやこれや。
読了日:08月20日 著者:東 雅夫
柳田国男と今和次郎 (平凡社新書)柳田国男と今和次郎 (平凡社新書)感想
関東大震災が起きた時、柳田はロンドンの在英日本大使邸にいました。「近頃の人間が軽佻浮薄」だから神の罰がくだったのだというある議員の発言(いつの時代もいるのね、そういう人)に怒りを露わにした柳田。彼が農商務省の官僚になり民俗学を興した動機の一つは飢饉でした。一方、今和次郎は民家採集からスタート。住んでいる人の気配がしない研究だと柳田から批判されながら、震災後の上野公園に並んだ避難小屋のスケッチ、考現学の発明を経て、柳田の批判に答えを出します。家と故郷を失うことに対して、それぞれの向き合い方が述べられます。
読了日:08月18日 著者:畑中 章宏
千葉 地名の由来を歩く (ベスト新書)千葉 地名の由来を歩く (ベスト新書)感想
東京の歴史散歩本はいっぱいあるのに、千葉についての本はあまりなく、ピンとくるものにもこれまで出会えませんでした。この本もあまり期待せず手に取りましたが、冒頭に『更級日記』が来たところで心をグッと掴まれました。稲毛浅間神社の社殿から、今はなき大鳥居を通して富士山をみるとどういうことになるのか。流山と、福島県相馬市の関係。なぜ成田山に京都神護寺不動尊を持ってきたのか。ちゃんと参考文献リストもあるので、この本から更に別の本へと辿っていけます。本当の意味でこの本読み終わるのは、一通り歩き回ってからだなあ。
読了日:08月13日 著者:谷川 彰英
失語症の理解とケア失語症の理解とケア
読了日:08月13日 著者:遠藤 尚志
大人の発達障害ってそういうことだったのか大人の発達障害ってそういうことだったのか
読了日:08月13日 著者:宮岡 等,内山 登紀夫
空海入門: 弘仁のモダニスト (ちくま学芸文庫)空海入門: 弘仁のモダニスト (ちくま学芸文庫)感想
フランス文学・思想が専門の竹内先生による空海入門。ご本人がはっきり書かれているように、専門外の分野についての著作です。Amazonには僧侶の方による、呆れたという趣旨のレビューが掲載されてますが、これはあくまで竹内先生が空海に入門した結果の書物であると捉えればいいのでは?と思います。弘法大師として後の世に伝説化した空海ではなく、実像を追求したいという著者は、高野山に篭り、空海の足跡を辿り各地を登山し、中国の西安杭州にまで足をのばします。空海は個人と自由を発見したモダニストであるというのが著者の主張です。
読了日:08月13日 著者:竹内 信夫
サウンドスケープ―その思想と実践 (SD選書)サウンドスケープ―その思想と実践 (SD選書)感想
サウンドスケープの概念を提唱したマリー・シェーファーの意図、それが我々にとって持つ意味について考察された本。視覚に偏重し聴覚が軽んじられる傾向への警告として唱えられたこの概念。近代におけるコンサートホールの発明により音がホール内の芸術とホール外の騒音に二分されてしまったというシェーファーの嘆きはよくわかる。一方で、音のするオブジェやインスタレーションの紹介は、うわあ芸術家の自己満足、、、という感じ。こういう業界の方々は妙な選民意識で社会をデザインしようとせず、環境音にも気を配ろうぐらいで留めてほしいです。
読了日:08月11日 著者:鳥越 けい子
I Swear I Saw This: Drawings in Fieldwork Notebooks, Namely My OwnI Swear I Saw This: Drawings in Fieldwork Notebooks, Namely My Own感想
人類学者によるメモ論。著者は2006年にコロンビアのメデジンを訪れた際、高速道路のトンネル内で人々が寝袋に入って過ごしているのをみました。「なんで彼らはトンネルにいるんだ?」と問う著者に、運転手は「トンネルは暖かいからさ」と答えます。このエピソードが延々反復され、ベンヤミンバロウズにとって生きること=メモだったことや、絵を描くことが芸術家の特権みたいになったのはごく最近のことにすぎないのだから、認識の手段として絵を描くことをみんな恐れるべきでないなどの意見が展開されます。見て、描いて書いて、生きるのだ!
読了日:08月11日 著者:Michael Taussig
渾斎随筆渾斎随筆感想
先に刊行された『鹿鳴集』(1940年)という歌集のなかからわかりにくそうなものを自ら選び出し、自作自注した文章を纏めたもの。奈良に魅せられた方の詠む歌ですので、どの寺社でどんな時にどんな気持ちで詠んだのか、静かな文章で解説されます。合間合間に小川晴暘らによる写真が挟まり、昭和十年代の奈良の様子を文章でも写真からも垣間見ることが出来ます。昨年秋に奈良市内を巡った際、あちこちにこの方の歌碑があるのに気がつきました。生前から歌碑は建てられていたようで、そのうちの一つについての痛々しいエピソードも書かれています。
読了日:08月09日 著者:会津 八一
都市と野生の思考 (インターナショナル新書)都市と野生の思考 (インターナショナル新書)感想
このお二人の対談、このタイトルということで期待していた新刊ですが。これからのリーダーについて語られる箇所で肯定的に引用されるのが今更松下幸之助のリーダー論だったり。生きがいは本来誰かに期待されることによって生まれる、自分で決めるものではない、と語られたり。震災時の芸大生やアーティスト達の活動を妙に過大評価したり。ネット上の人間関係に危機を感じるとか。還暦を越えた学長と総長の対談はこういうものになっちゃうのかしら。お互いの専門に少し突っ込む第六章だけ俄然面白くなります。なんかもったいない対談だなあ、これ。
読了日:08月07日 著者:鷲田 清一,山極 寿一
よるのおとよるのおと感想
静かな夜のなかに一瞬だけ響いた微弱な音。その音は空間や時を越え、どこまでもいつまでも広がり続ける。
読了日:08月06日 著者:たむら しげる
藤原道長「御堂関白記」を読む (講談社選書メチエ)藤原道長「御堂関白記」を読む (講談社選書メチエ)感想
平安時代の日記は、後世の人々が政務や儀式を法令や先例どおりに行うことが出来るよう、情報蓄積の手段として書くものであった。しかし道長の場合は自分自身のための備忘録として書いている。その意識が文字の乱雑さ・文体の破格さなどに現れている。いわば業務日誌として書くのが当然の時代に個人的メモとして書いていたわけで、雑なのですね。この本には道長自筆本や古写本の写真版が豊富に掲載されていて、筆跡や、一旦書いた文を抹消した跡、古写本と原本の比較からわかることなどが解説されています。日本文化や政治の本質が見えてきます。
読了日:08月06日 著者:倉本 一宏
鏡のなかの薄明鏡のなかの薄明感想
再読。日本政治思想史が専門の方による時評・書評集。刊行後七年過ぎた今、小熊英二『1968』、西部邁『友情』、田口ランディ『ドリームタイム』などの書名をみると、七年の月日は残酷だなあとしか思えないのでした。うーん。中途半端に古くなってしまっているな。100年ぐらい後に読まれるといいかも。はしか流行のニュースを読んだ女性キャスターが「大学がお休みになったのはいいのですが」と発言したのを「授業を受けるのが学生のつとめ」と批判し、本音主義が持つ危険性を説く一文は、今回読み返してみても説得力ありました。
読了日:08月04日 著者:苅部 直

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