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読書と散歩

そのまんま。

4月の読書メーター まとめ

2017年4月の読書メーター
読んだ本の数:24冊
読んだページ数:4926ページ
ナイス数:324ナイス

WIRED VOL.27/科学のゆくえを問う大特集「Before and After Scienceサイエンスのゆくえ」WIRED VOL.27/科学のゆくえを問う大特集「Before and After Scienceサイエンスのゆくえ」感想
久しぶりのWIRED。サイエンスのゆくえ特集。巻頭言で編集長がブライアン・イーノを引用しながら、〈科学〉も歴史の産物であり決して普遍/不変ではないと述べた後、多元主義の必要性が語られる村上陽一郎インタビューへと続きます。村上陽一郎さん、すごく久しぶりに拝見しましたが、結構刺さるなあ。パウリがいると必ず実験が失敗するという当時の噂をフォトコメディ(というんだそうです)で展開したデヴィッド・ファティの作品には吹き出してしまいました。お腹痛い。フンボルトの伝記著者のインタビューも良いです。早く続きを読もうっと。
読了日:4月30日 著者:CondèNastJapan(コンデナスト・ジャパン)
差別の民俗学 (ちくま学芸文庫)差別の民俗学 (ちくま学芸文庫)感想
1932年に雑誌で中里龍雄が投げかけた「もぐらの嫁さがし」についての問いに熊楠が応答。収められた書物によってそこから導き出す意義の取り方(天の定めた分際を越えるなとか)が異なる民話であることを指摘。その後赤松が特殊部落史を引用しつつ、階級社会を維持するために支配階級が輸入し広めた民話であり、昔ばなしとはそうした性格のものだと続けるあたり、圧巻です。こういう流れ、後からそれぞれの著書で部分的に読んでもわかりにくいんですよね。やりとりを全て収録してくれてるおかげで、当時の誌面に展開された議論を堪能できました。
読了日:4月30日 著者:赤松啓介
LGBTを読みとく: クィア・スタディーズ入門 (ちくま新書1242)LGBTを読みとく: クィア・スタディーズ入門 (ちくま新書1242)感想
他者を傷つけぬためには正確な知識が大切というところまでは同意。しかし〈セクシュアルマイノリティをそれぞれの特徴やニーズに応じて分類した地図〉に人々が習熟し、そして更にその地図の問題点を考察していくような、そこまでの水準を人々に求めるのは?大森貝塚の古代人は東京生まれというアイデンティティはもってなかったろうという話のあと、同性愛という言葉は百年ほど前に生まれたのだからそれ以前には同性愛は存在しないというのも?その二つは同列かなあ。本書中で反論されてる意見をあえて書きますが、用語にこだわりすぎだと思います。

追記:縄文人アイデンティティと同性愛者のアイデンティティを同列に論じられるか?と昨日からずっとモヤモヤしてましたが、違和感の正体が少し見え出したので追記します。このロジックは、コトバと科学を混同してるから変なんだと思います。

縄文時代には〈日本〉という言葉はなかったというのは網野さんらが繰り返し仰っていることで、日本という言葉の誕生以前の人々を日本人とするのは誤りというのは非常に納得できます。しかしここで注意すべきなのは、縄文時代も中世も、まだ科学の時代ではなく呪の時代だということです。

一方、〈同性愛〉というのは、著者も書いているように19世紀後半に性科学者が提出した近代科学の用語です。この点で、同じコトバとはいえ〈日本〉〈江戸〉〈東京〉といったコトバとは質が根本的に異なります。それらの地名を名付けた人々は近代科学的な意図で地名を考案したわけではないからです。

ですので、〈ある言葉が生まれたことを論拠〉とし、縄文人についてこれまで行われてきた論争を援用して自身の説を補強しようとする著者のロジックは、科学というものがいつから成立したのかを考慮にいれてない点で破綻していると思います。以上、備忘録代わりに・・・


読了日:4月29日 著者:森山至貴
フィールドワーク―書を持って街へ出よう (ワードマップ)フィールドワーク―書を持って街へ出よう (ワードマップ)感想
フィールドワークの入門書であると同時に、フィールドワークって何なのか学生向けに書きながら著者自身も考察しているような本。質的調査と量的調査、現場べったりと図書館への引きこもり、現地の人々とあくまで距離を取るかどっぷりその文化に浸かるか。どっちにも振り切らず、その居心地の悪さ、自責の念や批判に耐えながらよそ者であり続けることがフィールドワーカーの条件であるというのが著者の主張。このストレス解消には日記が役立つと、マリノフスキーの日記が引用されます。引用箇所だけでもきわめて人間臭い日記。これは読んでみよう。
読了日:4月29日 著者:佐藤郁哉
現代思想 2017年5月号 特集=障害者 ―思想と実践―現代思想 2017年5月号 特集=障害者 ―思想と実践―感想
介助者の男性の「自分のようなタイプの男性は、制度的にも法的にも社会資源的にも圧倒的に恵まれていて、そのことはひたすら反省し続けて、『絶望』とか言っている暇もなく、漸進的に社会改良することにコミットするしかない」という発言に、うーん・・・。「失語」が、思うことはあるけど批判を怖れ発言することを我慢する意味で誤用されてたり。当事者運動をされてきた方がインタビューで北朝鮮に行きよど号メンバーに会ったことを語っていたり。どうしてこうなっちゃうんだろうなあ。自己批判やら北朝鮮やら、それじゃまるで日本赤軍じゃないか。
読了日:4月28日 著者:熊谷晋一郎,杉田俊介,大野更紗,湯浅誠
東京戦後地図 ヤミ市跡を歩く東京戦後地図 ヤミ市跡を歩く感想
かれこれ四十年ほど関東に住んでますが、山手線の外側にしか住んだことがありません。ヤミ市跡といっても諸所にあるわけで、この本にも上野や池袋など山手線の各駅も取り上げられているのですが、大井町・大森・蒲田などの京浜東北線沿線、錦糸町・小岩などの総武線各停沿線など勝手知ったる土地にどうしても目がいきます。各地域ごとのページ数は2ー4頁なので記述は薄いけど、これは仕方ないかな。
読了日:4月23日 著者:藤木TDC
「今、ここ」から考える社会学 (ちくまプリマー新書)「今、ここ」から考える社会学 (ちくまプリマー新書)感想
書名『スマホ社会学』の方が良かったんじゃないですか?と言いたくなるような内容。昔多かった電車内で新聞を読む行為と、現代増加してるスマホを見る行為は異なる。新聞は混んでる車内で互いが儀礼的に距離を取るための道具だが、スマホはそこにいない他者と交信したりしてるので車内に我々の関心はないからだ。周囲への関心を現代の我々は喪失してる、と著者は嘆くのですが。へえ?夕刊フジ広げてふんぞり返ったり扇でパタパタ香水の匂い車内に撒き散らしてたおじさんおばさん、周囲への関心なんて持ってたのかしらね。全然納得できないな。
読了日:4月23日 著者:好井裕明
ノーマライゼーション 2017年3月号ノーマライゼーション 2017年3月号
読了日:4月23日 著者:日本障害者リハビリテーション協会
やっぱりおおかみ (こどものとも傑作集)やっぱりおおかみ (こどものとも傑作集)感想
幼稚園児だった頃ひたすら読み返していた絵本。一人で町を歩き回ったり自転車で遠出したりして遊んでいた自分と、町をさまよい歩くおおかみとを重ね合わせるように絵本の世界に没入していた覚えがあります。今、幼稚園児が一人で遠出してたら園や町内会で問題児扱いされそうだなあ。物騒な事件が確かにたまに起こるけれども、一人で歩き回るなかで感じるものがあるんだけどな。現代に生きるそういう気質の子が息苦しさに負けませんように。その頃は当然英語なんかさっぱりわかりませんでしたが、今みると書き込まれている英語に結構遊びがあります。
読了日:4月23日 著者:佐々木マキ
魔都―久生十蘭コレクション (朝日文芸文庫)魔都―久生十蘭コレクション (朝日文芸文庫)感想
昭和九年大晦日から翌年二日午前四時までの間に東京で起きた事件を巡る、新聞記者・警視ほかその筋の方々やら銀座の蝶やらが交錯しまくる推理小説。口述筆記で書かれたそうで、作者の語り口に誘われ、日比谷公園の鶴の噴水ほか東京各所で繰り広げられる登場人物達のドタバタに聴き入らざるをえないような感じの文体です。オーディオブック向けかもしれないなあ。情景描写のどぎつい美しさと、人々の狡猾さ・逞しさが印象的です。42ー3歳の仕事に打ち込む初老の陰気な警視。年齢が重なるので非常に感情移入して読んでしまいました。ああ・・・。
読了日:4月23日 著者:久生十蘭
日本中世に何が起きたか 都市と宗教と「資本主義」 (角川ソフィア文庫)日本中世に何が起きたか 都市と宗教と「資本主義」 (角川ソフィア文庫)感想
復刊。最近話題の呉座勇一による解説は、網野がいかに学界から冷ややかな視線を浴びて死んでいったかを淡々と述べたあと、彼の後期の学説を進化とみるか退行とみるかを読者に委ねています。収められている小論『中世の音の世界』。太鼓・ひょうたんなどの楽器が当時果たした役割のほか、風聞・うわさ(コミュニケーションがもたらす負の側面であるこの現象、非常に最近関心があります)、高い声を出すことが狼藉とされていた理由などが述べられていて、ああ、これ、ものすごく大事な話だ。学界の評価なんかどうでもいいや。
読了日:4月22日 著者:網野善彦
霧のなかの声 (1982年)霧のなかの声 (1982年)感想
遺作中短編集と帯にあります。8作中6作は私小説であり、戦中戦後の奈良や信州での思い出が描かれます。冒頭に収められた表題作は大学生の主人公とその友人の日本アルプスでの会話場面から始まります。しかし主人公は登山の最中しきりに幼少の頃を振り返り、彼の家族にまつわる記憶と、今登っている最中の山の描写が交互に立ち現れます。そして突然主人公が別の人物に変わり・・。二番目に収められた『蜃気楼』とともに、家族とはいったいどういう根拠で結びついているものなのかを、山のような人智を超越したものの視点から冷徹に描く作品でした。
読了日:4月21日 著者:島村利正
性・差別・民俗性・差別・民俗感想
マツリの本質は性的解放である。山車や踊りなどは本来付属物に過ぎないと語られます。最近某映画で話題になった新婚夫婦の「柿の初ちぎり」などの性民俗を紹介した後、資本主義への転換とともにムラが崩壊し、これも今話題の教育勅語などにより民衆の自由な性的慣習が国家に弾圧されていったと述べられます。柳田國男梅棹忠夫がボロクソに嘲笑われ批判され続けますが、彼らが見ないふりをした性民俗にこそ民衆・共同体の本質があるとの怒りと信念ゆえのようです。共同体や生きることの本質を直視せよと叱られ、かつ激励されるような本です。
読了日:4月18日 著者:赤松啓介
生きるのが面倒くさい人 回避性パーソナリティ障害 (朝日新書)生きるのが面倒くさい人 回避性パーソナリティ障害 (朝日新書)
読了日:4月18日 著者:岡田尊司
半世界に生きる―旦旦旦語録半世界に生きる―旦旦旦語録感想
サルトルなどの訳者による随筆集。世の中をテレビを観る人と観ない人に分け、それぞれが世界の半分なので半世界とした場合、著者が生きているのは後者であると。テレビは自分の時間を奪うことに気づき、昭和三十年前後に物置に放り込んだそうです。以来約三十年、接するものは全て実物。「実存主義は、実物主義」がマニュフェストだと宣言されます。巻末は13日の金曜日に早稲田で行われた最終講義『私のコギト・エルゴ・スム』の要約。実存主義はじつぞんと読むのかじつそんと読むのかという話題から、思考と存在との関係性について語られます。
読了日:4月16日 著者:松浪信三郎
コーヒーもう一杯 (角川文庫 緑 371-12)コーヒーもう一杯 (角川文庫 緑 371-12)感想
角川文庫赤背の一冊。小説も混じってますが、ほぼエッセイ集です。わずか三ヶ月のサラリーマン生活の思い出『七月一日、朝、快晴。円満退社』。こういう気持ちには若い頃確かになったけど(多分多くの人がなったことあると思うけど)、私は退職届出せなかったなあ。日本は島・アイランドなのだと再確認する『君はいま島へ帰る』。山口百恵の写真集評『蒼くはない時にむかって』。70年代日本映画的若者達の性が房総半島で疾走する『スティッキー・フィンガーズ』などがいい感じです。後書きでは「国電お茶の水駅の階段」が出てきます。ああ国電
読了日:4月14日 著者:片岡義男
河鍋暁斎絵日記: 江戸っ子絵師の活写生活 (コロナ・ブックス)河鍋暁斎絵日記: 江戸っ子絵師の活写生活 (コロナ・ブックス)感想
暁斎が描いた絵日記は、欲しがる知り合いに次々と売り払われていたそうです。それゆえあちこちに散逸しているとのこと。先日のBunkamuraでの展覧会でもごく一部が展示されてましたが、この本には明治十八年一月の日記が収録されています。毎日大勢の人と会って出かけて宴会して描いて、と無茶苦茶忙しそう。「一生稽古」の落款、格好いいなあ。仕事するって、そういうことだ。
読了日:4月13日 著者:
幻想博物誌 (1974年)幻想博物誌 (1974年)感想
蟹・蝶・猫・鴉・馬・鵺がそれぞれ登場する短編六つを収録。おまけのしおりに書かれている夢についてのエッセイには動物達が総登場。日影丈吉の描く大正から昭和初期の房総はしっとりと怪しい。波の音と磯の香りのする入江が真夜中に浮かび上がってくるような『月夜蟹』が冒頭に。本所から東京湾に漕ぎ出す舟の音が闇の奥から聴こえてくるような『鵺の来歴』が巻末に。ひとつを除いてどれも陰惨な話ですが、美しい。後書きで、幻想というのは自身の経験に関係するものだとお書きになってます。確かにそうだ。自分に身近な情景だから怖いんだよな。
読了日:4月11日 著者:日影丈吉
反知性主義: アメリカが生んだ「熱病」の正体 (新潮選書)反知性主義: アメリカが生んだ「熱病」の正体 (新潮選書)感想
帯のトランプ氏や副題から受ける印象とは異なる内容の本。反知性主義とは、自省することなく権力と結びついている知性への反感であり、本来は肯定的な意味合いの言葉である、ということを丁寧に説明してくれます。それなら私も反知性主義で生きていきたいなあ。そのような考えが生まれた背景の解説として、本文の殆どはアメリカキリスト教史のような内容になっています。最初は退屈だと思っちゃいましたが、政教分離の意味がアメリカと日本とでは異なることなど、説明が非常にわかりやすいです。自己啓発産業への端的な分析も納得です。
読了日:4月10日 著者:森本あんり
南方熊楠の見た夢南方熊楠の見た夢感想
表題の「夢」とは、文字通りの寝ている間にみる夢。熊楠が日記や書簡に書き遺した夢の記録について、ユング木村敏ベンヤミンなどを援用しつつ考察されています。テーマは南方マンダラという、熊楠が遺した科学論のようなものの分析。夢はその中の〈事不思議〉の事例です。〈やりあて〉とはひらめき・予知のようなもの。そのために必要な〈理不思議〉を、ユング集合的無意識ベンヤミンのパサージュなどの概念を用いて分析しているのですが、どこからどこまでが誰の論だか、かえってわかりにくくなってしまっている気がします。
読了日:4月8日 著者:唐澤太輔
乱読のセレンディピティ (扶桑社文庫)乱読のセレンディピティ (扶桑社文庫)感想
乱読は悪いことのように言われがち。けれど発見は往往にして自分の職業とは関係のなさそうなジャンルの本を読んでる時に起こる。精読せず風のように読むのがよい、と説かれる読書論。料理の本の考え方が仕事に役立ったこと、自分もあります。言語の本質は活字じゃなく談話だ、というのは当たり前のことですが、それを忘れると読書の本質もずれてしまう。国際的競争の激化するこれからは生きる力に結びつかない教養は捨てざるをえないかも、というのが本書の一番の肝かな。最近強く感じることです。一寸先は闇。毎日が闘いだからなあ。気をつけよう。
読了日:4月5日 著者:外山滋比古
子ども観の近代―『赤い鳥』と「童心」の理想 (中公新書)子ども観の近代―『赤い鳥』と「童心」の理想 (中公新書)感想
フィリップ・アリエス『〈子供〉の誕生』や柄谷行人をまくらに展開していく『赤い鳥』論。著者は後書きで『赤い鳥』童話に愛着を覚えると書いていますが、ほんとうですか?と訊いてみたくなるほどそれぞれの童話に対する評価は辛辣。作家達が描いた現実離れした良い子像や童心主義への批判、ところどころ頷けるところもなくはない。でも、なんか愛が無いなあ。元編集者の方らしいけど、過去の文学作品に対するこの人の態度、どうも馴染めませんでした。テキストを批判的に読む、ということの意味を勘違いしてるんじゃないかしら。
読了日:4月3日 著者:河原和枝
バラッド30曲で1冊 (角川文庫)バラッド30曲で1冊 (角川文庫)感想
掌編30本。合間合間に著者が撮影した写真が二枚ずつ挿入されます。掌編がバラッドなら、写真はインタールードの役割なのかな。あるいはレコードの無音溝か。近年の片岡作品に比べると登場人物達はみな若く、恋愛の作法も若者のそれです。恋人達の一瞬を切り取ったようなスケッチと、ペパーミント・キャンディや庭のベンチ、交通標識を写した写真を交互に眺め、読み終わった後は一枚のレコードを聴いた気分になりました。
読了日:4月2日 著者:片岡義男
ユリイカ 2017年4月臨時増刊号 総特集◎縄文 JOMONユリイカ 2017年4月臨時増刊号 総特集◎縄文 JOMON感想
「日本」は律令国家成立とともに生まれたのであり、縄文時代の日本など存在しない。だから縄文を語るときウッカリすると陥る「日本スゴイ」はナンセンスだよ、ということが民俗学や考古学の立場から強調されてます。その一方でなぜか頻出する、今度の東京五輪の話題。土器も建築もかたちが大事なのに現在の日本はザハ・ハディドの新国立競技場のような強いかたちが忌避されると建築史家が嘆いたり、火焔土器をモデルに聖火台をデザインする案について海外の研究者が称揚してたり。執筆者達の意見が錯綜してます。そういう意味でまさに雑誌。
読了日:4月1日 著者:中沢新一,赤坂憲雄,港千尋,安藤礼二

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