読書と散歩

そのまんま。

12月の読書メーターまとめ

2016年12月の読書メーター
読んだ本の数:18冊
読んだページ数:4613ページ
ナイス数:284ナイス

断片的なものの社会学断片的なものの社会学感想
社会学の講義を大学で聴いた時、これは人を〈お前は生きているだけで他人を傷つけているんだ〉と恐喝する学問だと感じ毎回講義に出席するのが憂鬱でした。国籍も性別も自ら選択したわけじゃないのに、なぜ批判され反省しなきゃいけないのか判りませんでした。この本は、そういう社会学の暴力的な纏め方からはみ出た部分の断章が詰まってます。口に出そうとしている一言が相手を決定的に傷つけてしまうのではないかと思い、結果生まれる沈黙。ケアを職とする者が時に感じるためらい。人との距離をどうとればいいのか。結論無いのがいいですね。
読了日:12月31日 著者:岸政彦
僕らのヒットパレード僕らのヒットパレード感想
LPについてのエッセイと対談。片岡さんは、日本の戦中から現在にかけてのアメリカとの距離を念頭にシャープス&フラッツなどについて書かれています。小西さんは、大滝詠一さんがお亡くなりになった時雑誌に首傾げたくなる文章を寄せていたのが印象に残ってましたが、この本でもジェイムズ・テイラー加藤和彦さんについて触れていて、デビュー時の音が変わっていくのに耐えられない人なんだなということが判りました。でも小西さん自身書かれているように人は時間と共に生きるもので、その人の作品も変わっていって当然と私は思いますけど。
読了日:12月31日 著者:片岡義男,小西康陽
金子信雄の楽しい夕食 (文春文庫)金子信雄の楽しい夕食 (文春文庫)感想
『楽しい夕食』。お酒を飲みつつ料理を作り、東ちづるにねちっこく絡み軽くいなされ、呂律すら怪しい時も頻繁だったあの料理番組のレシピ本。1ー12月の各月毎に章立てされ、各章の冒頭には随筆付き。これがなんともじーんとくる名文。まともに作ったらいくらかかるのこれ?という料理から原価百円ぐらいの料理まで様々並んでて、結構使えそう。文庫版のおまけにある正月のおもてなし料理から作ってみようかな。このおまけにも随筆がセットになっていて、この文章がまたじーんとします。
読了日:12月30日 著者:金子信雄
日本橋檜物町日本橋檜物町感想
昭和10年代、著者晩年の頃(享年54歳)書かれた画文集。「個性を描出することには興味が持てないのです」という著者が人物を描く時に何を目指していたのか、はっきりと宣言されます。東京美術学校の学生だった頃を中心に上野・浅草・木場などでの思い出が書かれた前半、泉鏡花などとの思い出が書かれた後半に分かれていますが、前半がいい感じです。最初と最後に収められた文章中のそれぞれに鮮烈な情景が、あるものによって見事に響きあっていて、ぞくっとさせられました。
読了日:12月30日 著者:小村雪岱
思想のドラマトゥルギー (平凡社ライブラリー)思想のドラマトゥルギー (平凡社ライブラリー)感想
対談集。十数年ぶりの再読。とても歯ごたえあり、どれくらい理解出来たか心許ないです。本書を貫くポイントの一つは演劇なのですが、とんと素養が無い私にはそこら辺の話はさっぱりわかりません。しかしシェイクスピア『お気に召すまま』の「全世界は一つの舞台」という考え方がゴフマンの役割理論につうじているという指摘にはドキドキしました。都市論や、書誌学の重要性、柳田の常民概念は上からみた常民だと笑いの研究を例に批判している箇所(ここらへん熊楠的)、チョムスキー批判とマクルーハンへの親近感が述べられる所も面白いです。
読了日:12月26日 著者:林達夫,久野収
世界システム論講義: ヨーロッパと近代世界 (ちくま学芸文庫)世界システム論講義: ヨーロッパと近代世界 (ちくま学芸文庫)感想
世界とは元々は一体化しているまとまりを意味する言葉であり地球上のあちこちに世界があった。1500年頃からヨーロッパを中心とする近代世界システムにそれぞれの世界は吸収されはじめ、20世紀初頭には世界は地球と同義になった。システムの中心はごく最近までヨーロッパであり、その他の世界は周辺で重要な役割を果たしたが周辺でしかなかった。今はアジアが勢いを増してるがアジア独自の価値観は無く、ヨーロッパの通った道を後追いしているだけである、という内容。そうだろうなあ。でもそれ、そんなに新しい見方だと思えないんだけど、、
読了日:12月19日 著者:川北稔
Enchanted Night: A Novella (Vintage Contemporaries)Enchanted Night: A Novella (Vintage Contemporaries)感想
夏の夜にある町で起こる出来事の数々。夜の森が描かれたりマネキンが動き出したりする序盤はブラッドベリっぽいなと思いつつ読んでましたが、次第に月光の下妖気漂う女性が登場したり、かと思うといきなりお下劣お下品な小話が挟まったり、虫達の合唱する詩が合間合間で繰り返されたりという中盤からは、私の脳内ではブラッドベリというより水木しげる的ゲゲゲなヴィジュアルで再生されました。かなり変なお話。もう何作か読んでみたい作家さんです。
読了日:12月18日 著者:StevenMillhauser
宮本常一と写真 (コロナ・ブックス)宮本常一と写真 (コロナ・ブックス)感想
昔の日本人の瞳は貧しくても輝いていた、というような言説には疑いをもって接するようにしていますが、この本に収められた写真の中の人々の表情は確かに輝いています。撮影時期はほぼ1960年代。ほとんどの写真は明らかに同意を得た上で撮影されており、宮本常一と、被写体となった人々との関係性が人々の表情に反映されているのかなと感じました。山口県浮島や佐賀県呼子での、船上で過ごす子ども達の写真が特によいです。風土記万葉集を鞄に入れて旅をするというスタイル、いつか出張の時に真似してみたいな。
読了日:12月17日 著者:石川直樹,須藤功,赤城耕一,畑中章宏,宮本常一
私的読食録私的読食録感想
お二人の、食に絡めて一冊の本を取り上げる、という形式のエッセイが交互に詰め込まれてます。どちらかというと堀江さんの取り上げた作品に、読んでみたいなと思わせてくれる本や既に読んで印象に残っている本が多かったです。読む本の傾向と食べ物の嗜好とは相関するのかな、食って食べ物自体の味だけで構成されてるわけではないしな、とか、寺田寅彦について書かれた堀江さんの文章を読みながら思いました。
読了日:12月17日 著者:角田光代,堀江敏幸
ヰタ・マキニカリス: 21世紀タルホスコープ (河出文庫)ヰタ・マキニカリス: 21世紀タルホスコープ (河出文庫)感想
再読。今回の文庫化では、上下巻ではなく全一巻にまとまりました。やっぱりタルホには、豪華本より文庫の軽さの方が合っていると手に取ってみて思います。読み返してみて、会話場面の描き方がとても美しいなと改めて感じました。疾走感のある『電気の敵』がいつ読んでも一番好きですが、『或る小路の話』『煌ける城』に描かれるタルホとその友人達の青春群像にも色褪せぬ眩しさを感じます。
読了日:12月16日 著者:稲垣足穂
中世の再発見―対談 (平凡社ライブラリー (66))中世の再発見―対談 (平凡社ライブラリー (66))感想
対談。前書きに書かれている通り、話題があちこちに飛びやや散漫な印象。宴会・飛礫天皇制についての議論が読みどころ。でも、どの話題もさらっと語られるだけなので、それぞれについて網野・阿部両氏が本腰を入れて書いたものも読んでみたい。後半では、歴史学者が他の人文系学問を見下す傾向があることを、お二人ともしきりに嘆かれています。今となっては笑い話、であってほしいなあ.
読了日:12月14日 著者:網野善彦,阿部謹也
失語症の訓練教材―139の教材と活用法失語症の訓練教材―139の教材と活用法
読了日:12月14日 著者:
写真のボーダーランド: X線・心霊写真・念写 (写真叢書)写真のボーダーランド: X線・心霊写真・念写 (写真叢書)感想
コナン・ドイルがいれあげた妖精写真や、心霊写真、念写といった、アヤシイ写真を題材としながら、写真というメディアの本質を考える試み。現実に起きている出来事を十全に写真におさめることは出来ないし、写真の中に描かれた以上、どんなに荒唐無稽で非科学的な内容でも現実と全く無関係でもない、と述べられます。ドイルが夢中になった妖精写真は人を騙す為に撮られたのではなく、少女達にとっての夢を写す鏡だったのだという著者の主張はわかる気がします。子どもの頃ってそういう遊び方をしますものね。
読了日:12月11日 著者:浜野志保
頬よせてホノルル (新潮文庫)頬よせてホノルル (新潮文庫)感想
著者の心の故郷?を舞台にした連作集。5つの短編が冬、そしてクリスマスによって貫かれています。銀幕の中のアメリカに憧れ日本を離れる、というのは、この作品の登場人物達の世代には多かったのかな。
読了日:12月11日 著者:片岡義男
二十世紀の知的冒険―山口昌男対談集 (1980年)二十世紀の知的冒険―山口昌男対談集 (1980年)感想
対談集となってますが、話相手の反応からして、対等な対談というよりインタビュー集といった方が正確な内容です。お相手はR・ヤコブソン、C・レヴィ=ストロース、オクタヴィオ・パス、A・チッコリーニ、G・スタイナーなど。チッコリーニのサティ談義は短いインタビューながら、演奏家としてどうサティを扱いたいのか率直に語られていて面白いです。
読了日:12月10日 著者:
いじめのある世界に生きる君たちへ - いじめられっ子だった精神科医の贈る言葉いじめのある世界に生きる君たちへ - いじめられっ子だった精神科医の贈る言葉感想
かつて書かれた『いじめの政治学』を「子ども向け訳」したもの。元のエッセイ同様、いじめのプロセスを読みやすい文章で、丁寧に描いています。著者自身の戦時中のいじめられ体験も語られます。いじめの生じるプロセスをいじめられている子が知ることで、自分が悪いわけではないと気がつくことができる、そのことの重要性が強調されています。この本が多くの、いじめられている「読書好きの小学校高学年」の子に届きますよう。周囲の子どもも大人も全員が敵だと絶望している子にとって、本だけが生きる支えになることもあるのですから。
読了日:12月8日 著者:中井久夫
絵はがきのなかの彦根 (淡海文庫)絵はがきのなかの彦根 (淡海文庫)感想
明治から戦後間もなくまでの絵葉書を手に、撮影されたであろう場所を探しあてる試み。多分ここだろうけど、でも石の形が?木の場所が?とか推理していく過程が面白いです。ただ彦根に限定されているので、行ったことのない私にはピンとこない文章もあり。絵葉書を手に歩き回る方法論も語られているので、それを参考に自分の馴染みの土地で真似してみようかな。『飛行機のある風景』の章は、稲垣足穂ファンにとっては著者の意図とは別の文脈でも楽しめます。
読了日:12月6日 著者:細馬宏通
オープンダイアローグとは何かオープンダイアローグとは何か
読了日:12月4日 著者:斎藤環

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