読書と散歩

そのまんま。

11月の読書メーター まとめ

2016年11月の読書メーター
読んだ本の数:21冊
読んだページ数:5106ページ
ナイス数:417ナイス

改訂版 雨月物語―現代語訳付き (角川ソフィア文庫)改訂版 雨月物語―現代語訳付き (角川ソフィア文庫)感想
いつか読みたいと思っていて、やっと読みました。現代語訳も付いてますが、あえて原文で挑戦。伝奇小説で、今風に言えば短編集。和漢の文献を駆使した翻案小説だというのは、注を読んで初めて知りました。しみじみする話や滑稽な感じの話、雄大な話もあるのですが、『吉備津の釜』は・・ひいい!という感じ。全体として夫婦や義兄弟などの強い人間関係およびその裏返しが描かれている印象。文章はとても綺麗で読み心地よく、音読したら気持ちよさそう。
読了日:11月29日 著者:上田秋成
津波と観音津波と観音感想
こういうタイトルの本ですが、東日本大震災以前から構想を練っておられたそうです。古代から水を求め、一方で水と戦ってきた我々日本人は、神仏習合のなかで仏教以前の水の神の化身として、十一面観音を祀るようになる。観音が各地の水辺に出現したことは、僅か百数十年前まで人々にとって作り話ではなく〈事実〉なのであった。明治維新で廃仏棄釈が行われたものの、千年以上続いた宗教観が綺麗に破壊出来るわけもなく、先の大震災の時も観音は静かに海に対峙し続けていた。古代からの自然観を、十一面観音を切り口に辿ってみせてくれる本です。
読了日:11月28日 著者:畑中章宏
岩本素白 人と作品岩本素白 人と作品感想
編集者として生前の著者と関わられていた方による評伝。当時は、永井荷風岩本素白が比較されて論じられがちだったそうです。意外なようであり、当然のような気もします。近年復刊ラッシュですが、実はご遺族は故人の遺志を尊重し池内紀さん編の一冊で打ち止めにするつもりだったとのこと。「生きていたらきっとそうすると思う」からと。後半で紹介されている諸家の言説のなかでは、森銑三の〈市井の隠者〉という評が一番しっくりきました。そういう姿勢で生きていたいものです。
読了日:11月25日 著者:来嶋靖生
東京遁走曲 (河出文庫)東京遁走曲 (河出文庫)感想
自伝的要素の濃い作品をまとめたと後付にあります。『浪花シリーズ』はタルホが好むオブジェ群についての短いエッセイ。『未来派へのアプローチ』は神戸での学生時代を、表題作と『わが庵は都のたつみ』『芦の都』は作家になって以降の回顧録。学生時代の思い出はタルホ自身も同級生達もいかにも文化系男子という感じで、いつの時代も変わらない若者像が描かれてます。作家になってからの思い出は恩師に喧嘩売るわお金ないのに酒屋に入り浸るわ落ちてるタバコ拾うのがうまいと自分でいうわで、もう滅茶苦茶。周囲にこんな人いたら迷惑だろうなあ。
読了日:11月25日 著者:稲垣足穂
なずな (集英社文庫)なずな (集英社文庫)感想
弟夫婦の生まれたばかりの娘を、事情により預かっている主人公。四十代半ばまで独り身で生きてきた彼は、赤ん坊を連れて町を歩くようになってから周囲の人々との関係性が変わってきたことに気づく。なずなちゃんが飲んでは出し、主人公がオムツを替え、という描写が本の中で延々と繰り返されます。同じことの繰り返しのようでいて、なずなちゃんも主人公も周囲も少しずつ変化していきます。
読了日:11月22日 著者:堀江敏幸
山田孝雄 共同体の国学の夢 (再発見 日本の哲学)山田孝雄 共同体の国学の夢 (再発見 日本の哲学)
読了日:11月19日 著者:滝浦真人
奈良飛鳥園 (1980年)奈良飛鳥園 (1980年)感想
写真家・小川晴暘の生涯を描いた小説。青年期に奈良の古美術に魅せられた小川は、それまで絵画に抱いていた夢を捨てきれないまま写真へと転向し、会津八一らとの出会いに恵まれつつ古美術写真家の道を歩み始める。事業として成功するが、仲間は次第に離れていき、また戦火は激しさを増していく。奈良の寺院の様子が目に浮かぶ描写が多いです。一方で女性関係は、現代の感覚で読んでしまうとダラしなすぎるんじゃないのという感じ。当時はこれが純愛だったのかもしれませんが・・
読了日:11月19日 著者:島村利正
よくわかる失語症 ことばの攻略本 ことば体操編よくわかる失語症 ことばの攻略本 ことば体操編
読了日:11月15日 著者:沼尾ひろ子
民俗学の旅 (講談社学術文庫)民俗学の旅 (講談社学術文庫)感想
自伝。「民俗学という学問は体験の学問であり、実践の学問である」と序章で宣言されており、著者の熱さが伝わってきます。百姓としての生まれにこだわり、地域の人々の生活の為に実務でも奔走しつつ、同時に戦前戦後の民俗学を形作ろうと試行錯誤した軌跡が綴られています。解説で神崎宣武が著者のことを「よく喋るおじさん」と書いてるのには笑ってしまいました。著者の講義の音源とか残ってないかなあ。
読了日:11月13日 著者:宮本常一
よるのさんぽ (1977年) (福音館のペーパーバック絵本)よるのさんぽ (1977年) (福音館のペーパーバック絵本)感想
幼稚園児の頃夢中になっていた絵本。もう一度みてみたいなあと思っていたら、引っ越した先の図書館にありました。男の子が夜の街を歩いていくと、、という話。著者は同じ話を90年代に全面的に描き直されていて、そちらの絵もとても綺麗です。ただ、私は出会いがこの70年代の旧版だったので、こちらの絵でないとあの頃の思い出が蘇りません。男の子、旧版の方がずんぐりむっくりしてて、新版の男の子より年齢が下のように感じられます。
読了日:11月13日 著者:田村茂
徘徊老人の夏 (ちくま文庫)徘徊老人の夏 (ちくま文庫)感想
再読。文庫本にして2ページほどのエッセイが詰め込まれている。著者の前を通り過ぎていった有名無名の人々を描いたものが多い。あとがきでは、脳梗塞で倒れた後に受けたリハビリについてお書きになっている。リハビリ室についての描写は、自分達の職業が種村さんからはこう見えてたんだなあということが感じられて感慨深かった。この文章、もっと知られてもいいなあ。
読了日:11月13日 著者:種村季弘
わたしの小さな古本屋 (ちくま文庫)わたしの小さな古本屋 (ちくま文庫)感想
倉敷で古本屋をされている著者が、開店までの経緯や店での日々、好きな作家や歌手、苔などについて綴った本。著者が理想とする苔のような生き方を思わせる、淡々とした文章です。
読了日:11月11日 著者:田中美穂
A Christmas Memory (Tale Blazers)A Christmas Memory (Tale Blazers)感想
いとこ同士の少年と初老の女性、そしてテリアが三人(というか二人と一匹)でクリスマスを迎える物語。読後感はかなりほろ苦いです。楽しい描写もあるのですが、少年が大人になっていくときに通過せざるをえない喪失と成長を、寓話として描いた小品という印象です。
読了日:11月9日 著者:TrumanCapote
食事の文明論 (中公新書 (640))食事の文明論 (中公新書 (640))感想
コミュニケーションということばは食物を神と人間が分配することを語源としていること、日本の食生活は飢餓の国々から巻き上げた食物で毎日宴会をしているように諸外国から見られかねないということ、家庭は現代では精神的な結びつきの意味しかなく夕食は家族全員が揃うことが重要であり、夕食まで個人化すれば家族集団の崩壊を意味するだろうということが述べられてます。出版されたのは1982年。著者の言う通りだとするととっくに家族集団は崩壊してることになるのでしょうが果たして?そして版元はなぜ今年この本を文庫で復刊したのでしょう。
読了日:11月9日 著者:石毛直道
東京百話〈天の巻〉 (ちくま文庫)東京百話〈天の巻〉 (ちくま文庫)感想
昭和の東京という怪物をテーマに、あえて外側からの視点で描いた文章で編んだというアンソロジー全3冊の第1巻。本巻は大道芸・食べ物・カフェ・飲み屋などについての文章が中心。一部鼻白むものもありますが(吉行淳之介さん、悪い意味での昭和の男という感じで読むのが辛かった)、幻の車窓風景が目に浮かぶ獅子文六『なぜ都電が好きなのか』、悲惨な私小説になりそうな話を笑いに昇華している古今亭志ん生『なめくじ長屋』、コンクリートの隙間に目を向けた西脇順三郎『雑草の美学/街路の雑草』など、いい随筆とまとめて出会えました。
読了日:11月8日 著者:
壷のある風景 (1970年)壷のある風景 (1970年)感想
神田古本まつりで購入した本。帯には『骨董随筆』とあります。確かにやきものや仏像の話が多いですが、石や町並み、果物や人についても骨董をいつくしむように書かれています。穏やかで心地よい文体でした。それにしても、そんな思いがけないところに、そんなものが無造作に眠っているものなんだなあ、、
読了日:11月7日 著者:青柳瑞穂
現代思想 2016年11月臨時増刊号 総特集◎木村敏現代思想 2016年11月臨時増刊号 総特集◎木村敏感想
私自身は木村敏先生、中井久夫先生お二人のどちらの著作も愛読しているし、木村の〈あいだ〉理論はコミュニケーション障害の臨床をしている者として常に意識している理論の一つだ。しかし巻中の対談で、「私には治療論は書けない」という木村の姿勢を評価する一方で、家庭訪問の経験などを具体的に書く「中井さんのやり方は凡人は真似しないほうがいい」と、ある精神科医が言っているのには暗澹とさせられた。あれほどコメディカルを大切にされてる方が、自身の治療論を名人芸扱いされたら、どういう気持ちになるだろう。
読了日:11月7日 著者:木村敏,森田亜紀,鷲田清一,野家啓一
自己言及性について (ちくま学芸文庫)自己言及性について (ちくま学芸文庫)感想
読みにくい文章です。原文もそうなのでしょうか。書かれている内容もかなり歯応えあり、抽象度も高く難しいですが、社会というシステムはコミュニケーションから成立しており、メディアや技術などの変化に対応するためシステム自身の自己再生産によって進化していく、ということが主な主張なのかなと。後半は各論として国家や芸術、法などについて語られてます。もう少し知識がついたら読み返してみたいです。
読了日:11月6日 著者:ニクラスルーマン
ことばの海へ―失語症ケアのはじまりと深まりことばの海へ―失語症ケアのはじまりと深まり
読了日:11月5日 著者:遠藤尚志
いつか王子駅で (新潮文庫)いつか王子駅で (新潮文庫)感想
再読。落ち着きたい時に折に触れて読み返す小説。王子駅と品川駅、大森駅周辺を舞台とする京浜東北線小説です。駄洒落のタイトルは、あの曲と王子駅だけでなく、かなり多くのものにかけられているのだと今回気がつきました。主人公の周囲の人物が皆魅力的。その人々と時を過ごしつつ悩む主人公ですが、結末にはとても納得がいきます。作中で触れられる昭和の小説群も読みたくなってきます。
読了日:11月4日 著者:堀江敏幸
内的独白 (1983年) (河出文庫)内的独白 (1983年) (河出文庫)感想
堀辰雄が『幼年時代』に書いた自らの幼少の頃の出来事はどのくらい事実なのか。堀自身や彼の友人知人達の証言を辿り、作品に描かれた大洪水が実際には何年に起きたのかを検討するため資料にあたり、彼の住んでいた家や幼稚園の住所を特定していく福永の手法は、解説で加賀乙彦が言うように推理小説家のそれです。引き込まれました。事実を作品化するとはどういうことか、堀の友人であった作家らも容赦なく批判しつつ福永の思うところを述べた私小説論でもあります。
読了日:11月2日 著者:福永武彦