8月の読書メーターまとめ

2016年8月の読書メーター
読んだ本の数:18冊
読んだページ数:4169ページ
ナイス数:296ナイス

ブラジル民衆本の世界―コルデルにみる詩と歌の伝承ブラジル民衆本の世界―コルデルにみる詩と歌の伝承感想
ブラジルでは文字を通したコミュニケーションよりも口頭でのやり取りの方が重視されるらしく、契約書等の書類には多くの国民が生理的嫌悪感を抱くと著者は言う。本も、コルデル(民衆本)と呼ばれる本が市場で紐にぶら下げられた状態で売っており、その内容は口承詩であり、買った者は自分で読むよりも誰かに音読してもらい、それを聴くのを好むという。国が違うと、書物の楽しみ方も変わることがよくわかる。著者は、このような民衆本はブラジルの現状を民俗学的に良く表した表現形式であるとまとめている。
読了日:8月31日 著者:ジョゼフ・M.ルイテン
ポエムに万歳! (新潮文庫 お 97-1)ポエムに万歳! (新潮文庫 お 97-1)感想
小田嶋隆の言うポエムというのは東京五輪の招致のキャッチコピー、相田みつを、松岡修造、最近の天声人語といった「一人称の主語がむくむく出てくる」もののこと。本文の内容には賛同できるところも首をかしげるところもあるけれど、「斜に構え」るな、なんて五輪招致委員会や電通の社員に偉そうに言われたくないという箇所は心底賛同。
読了日:8月29日 著者:小田嶋隆
太陽黒点  山田風太郎ベストコレクション (角川文庫)太陽黒点 山田風太郎ベストコレクション (角川文庫)感想
昭和三十年代の東京が舞台のミステリー。大学生同士でも貧富の差により恨みつらみや妬みが生じ、戦中派から見れば、貧困大学生ですら、大学行って恋愛して十分幸せじゃねえかと怨みの対象となる。貧富と世代間の格差が交錯する中で引き起こされる陰惨な人間模様の物語。
読了日:8月27日 著者:山田風太郎
南方民俗学 (河出文庫)南方民俗学 (河出文庫)感想
二部に分かれている。第一部は論文集。大傑作とされる〈燕石考〉、初めてまともに読んだが、Natureに投稿したものの残念ながら不掲載に終わったのは正直わからないでもないなと感じた。日本文献をいささか引用しすぎたのではないか。そして、Nature掲載に至った他の文より長すぎたのではなかろうか。第二部は柳田國男宛書簡集。このシリーズでは往復書簡でも熊楠分しか掲載されていないので、読んでてモヤモヤする。でも後半になるにつれ熊楠が柳田に怒り心頭に達していくのがガンガン伝わってくる。
読了日:8月25日 著者:南方熊楠
東海道品川宿―岩本素白随筆集 (ウェッジ文庫)東海道品川宿―岩本素白随筆集 (ウェッジ文庫)感想
品川駅のホームに波が押し寄せていて、鰻取りをしている小舟が見えたという明治中期頃の品川周辺を描いた随筆集。明治とはいえ、江戸の名残が住民の中に色濃く残っていたことが数々のエピソードからわかる。街道沿いのお寺や墓地は、かなり寂れてはいるものの部分的に健在。読んでいたら、またあのあたりをうろつきたくなってきた。
読了日:8月23日 著者:岩本素白
壇蜜日記2 (文春文庫)壇蜜日記2 (文春文庫)感想
第一弾より鬱屈度が上がっている気がする。楽しい文体で書かれてはいるけれど、面と向かって暴言を吐かれたエピソードが一番読んでてこたえた。プレコなどの飼育観察日記でもあり、そういう箇所はほのぼのしている。
読了日:8月21日 著者:壇蜜
雨の日はソファで散歩 (ちくま文庫)雨の日はソファで散歩 (ちくま文庫)感想
再読。多くのテーマが詰め込まれているので、読むたびに新しい発見がある。今回は、東京の各所だけでなく、小田原や真鶴にまつわる記述が気になり、出かけたくなってしまった。
読了日:8月20日 著者:種村季弘
JAMJAM日記 (角川文庫 (5492))JAMJAM日記 (角川文庫 (5492))感想
古本屋で購入。書かれた時期は1975年から1977年まで。仕事の合間にミステリー読んでジャズのライブに行ってコーヒー飲んで、という日々の記録がひたすら続く日記。自分の書いたことに自分で「当たり前だ!馬鹿!」と突っ込みを入れまくる賑やかな文体。大きな出来事は一切無し。読みどころとしてはチャールズ・ミンガスミルト・ジャクソンなどのジャズメン達が来日した時の様子がわかったり、大島渚愛のコリーダ』撮影・公開時のエピソードや当時既に故人の川島雄三への熱い思いが読み取れるところだろうか。
読了日:8月16日 著者:殿山泰司
稲垣足穂 飛行機の黄昏 (STANDARD BOOKS)稲垣足穂 飛行機の黄昏 (STANDARD BOOKS)感想
平凡社から刊行された〈STANDARD BOOKS〉の一冊としてタルホが登場。「科学のこころ」を本棚に、がこのシリーズのコンセプトなので、収録された作品もお月さま、ヒコーキ、星座に関するもの中心です。巻末には初期の『夢がしゃがんでいる』などの男の子ものもしっかり入ってます。編集の仕様によって、また違う見え方が楽しめる作家だなあと改めて感じることが出来ました。
読了日:8月14日 著者:稲垣足穂
誰をも少し好きになる日 眼めくり忘備録誰をも少し好きになる日 眼めくり忘備録感想
短文集。掲載されている写真は海外で撮られたものが多いが、所々に都内で撮られたものが混じる。淡々とした文を淡々と読んでいたが、最後の章は「一番多く写真を撮らせてもらったひと」に対する思いが詰め込まれており、心が揺さぶられた。
読了日:8月14日 著者:鬼海弘雄
変えてゆく勇気―「性同一性障害」の私から (岩波新書)変えてゆく勇気―「性同一性障害」の私から (岩波新書)感想
性同一性障害の著者は、男性としても女性としても会社員の経験をした後に区議会議員になっている。性別により会社がかけてくるプレッシャーの質は違うし、男同士・女同士の付き合いの厄介さの理由も違うけど、男は男で、女は女で、それぞれ会社員として生きるのは辛いことが多い、と著者は実感を込めて書いている。
読了日:8月13日 著者:上川あや
食卓文明論 - チャブ台はどこに消えた (中公叢書)食卓文明論 - チャブ台はどこに消えた (中公叢書)感想
ちゃぶ台の〈ちゃぶ〉は、横浜英語の〈ちゃぶちゃぶする〉=食事する、が起源と思われるとのこと。家庭とは食を共有するために産まれたものであり、共に食事をする習慣が消えた時が家族という形の終焉と著者は言う。しかし著者も別の箇所で述べるように、毎日家族全員で食卓を囲む家庭は最早少数派だろう。職場や学校、塾の時間帯自体が共食を前提としていないのであり、社会が最早そのような習慣に価値を認めていないのだろう。では家族であることの意義をどこに我々は今後感じるのだろうか。それとも終焉を迎えるのか?
読了日:8月11日 著者:石毛直道
現代思想 2016年3月臨時増刊号 総特集◎人類学のゆくえ現代思想 2016年3月臨時増刊号 総特集◎人類学のゆくえ感想
対談2つ、デスコラらの翻訳論文数篇、日本人の論文数篇、哲学と芸術に重なる論文数篇、人類学者らのチャートを含む。金子遊『対岸のアラベスク』、イェンセンとロジェ『「ドゥルージアンの交差点」序論』が面白かった。それにしても人類学はこの十年ほどで随分変わったんだなあ。
読了日:8月6日 著者:中沢新一,上橋菜穂子,春日直樹,檜垣立哉,エドゥアルド・ヴィヴェイロス・デ・カストロ,マリリン・ストラザーン,フィリップ・デスコラ,箭内匡,奥野克巳,金子遊,久保明教,清水高志,水野千依
歴博vol.191 民俗学ー終焉からの再起動歴博vol.191 民俗学ー終焉からの再起動感想
民俗学の終焉を見据える視点からしか、この学問の再起動はありえない」と編者は巻頭で書いている。それを受けて編まれた各記事では〈落日〉〈魅力が無くなった〉と暗い表現が頻出して読んでて気が重くなる。じゃあ再起動への道筋が示されるのかというと、今世紀に入って出された民俗学の本や論文は参考文献がほとんど文化人類学社会学などの他分野じゃないかと批判するだけ。提言らしい提言は〈親しみやすく、実学的な民俗学のススメ〉という柴崎茂光の記事ぐらいしかなく、あまりに寂しい。
読了日:8月6日 著者:川村清志
寅さんの向こうに 渥美清没後20年記念 (週刊朝日ムック)寅さんの向こうに 渥美清没後20年記念 (週刊朝日ムック)感想
歴代マドンナ達へのインタビューと現在の写真が掲載されている。当たり前だけど、今や、みんなお婆ちゃん。当時20代の彼女達に撮影の合間渥美清がかけた言葉が、どれもさり気なく、格好いい。永六輔の手記で触れられる渥美清とその母親のエピソードは中々凄みがある。
読了日:8月6日 著者:
種村季弘 (KAWADE道の手帖)種村季弘 (KAWADE道の手帖)感想
何度目かの再読。巻末の【フェイヴァリット・アンソロジー】を今回はじっくり読んだ。ほぼ怪談集のようなラインナップ。泉鏡花や芥川の怪談も味わい深いが、森鴎外田中貢太郎の短編が怖さという点では群を抜いている。
読了日:8月5日 著者:
かまくらパンかまくらパン感想
鎌倉にあるパン屋さんの店舗・商品紹介の合間に、長田弘らの詩や、澁澤龍彦夫人や沼田元氣といった鎌倉ゆかりの人達のインタビューが挟み込まれている。ただ、詩はほんの数編だし、インタビューはどれも1ページに収まるさらっとした談話で、読み物としてはちょっと物足りない。雑誌なら分かるんだけどなあ。でも地元の出版社がこういう本出すのは地域起こしとして、とてもいいですね。
読了日:8月4日 著者:小出美樹,井上有紀
結婚と家族のこれから 共働き社会の限界 (光文社新書)結婚と家族のこれから 共働き社会の限界 (光文社新書)感想
公正な結婚や家族などあるのだろうか、家族とはそもそも誰かを特別扱いすることから生じるものではないのか?私的領域に公正さを求めるのはおかしいのではないか、家族を持たなくても生きていけるような社会を目指そう、という本。特定の立場に偏ることなくバランスよく書かれていると思う。今は過渡期なんだな。
読了日:8月3日 著者:筒井淳也